
みなさん、こんにちは。
経済産業省推進資格のITコーディネータ(認定番号0104242013C)の島田慶資です。
WordPressを使ってWEBサイトを構築・運営していると「もっと自由にデザインを変えたい」「使いやすさを向上させたい」と感じる場面は多いものです。そんな希望を実現してくれるのが、WordPressの核ともいえるPHPというプログラミング言語です。
これを使うことによって、通常のプラグインやテーマでは実現できない機能などを実装できます。そこで、PHPの基本的な仕組みから、バージョン管理の重要性、そして編集によって可能になるカスタマイズなど、初学者にとって分かりやすく解説します。
目次
PHPとは?
PHPは、WEBサイトにインタラクティブな動き(双方向のやりとり)を実装するために使われるプログラミング言語です。もともとは「Personal Home Page(個人のホームページ)」の略でしたが、現在は「Hypertext Preprocessor」と解釈されています。
この言語は、オープンソース(誰でも無料で使える)で、HTMLと組み合わせて使うことができ、WEBページの裏側(サーバー側)で動きます。具体的には、ログイン機能や問い合わせフォーム、商品検索など、ユーザーの入力に応じて画面が変化するような機能に使われます。
PHPは、初心者でも学びやすい言語として知られており、文法がやさしく、解説動画や書籍などもたくさんあります。そのため、個人のブログから大規模な通販サイト、業務システムやCMS(コンテンツ管理システム)まで、幅広く利用されています。データベースと連携したり、入力された情報を処理したり、繰り返しの動作などが簡単に実現できます。
HTMLやCSSとの違い
HTMLはページの見出しや段落などの構造をつくる言語で、CSSはその見た目を装飾するために使われます。HTMLとCSSはユーザーのブラウザで直接読み込まれ表示されますが、PHPはその前段階で裏方としてページの内容を組み立てています。
つまり、PHPがサーバーでページの中身を用意し、それをHTMLとCSSが整えて、最終的にユーザーのブラウザにWEBページとして表示させるという仕組みになっています。
バージョンについて
PHPはWEBサイトに動きをつけたり、フォームの送信を処理するなどの用途で使われている言語ですが、より速く・安全に使えるように、定期的に新しいバージョンが出されます。例えば、PHP8.0や8.1、8.2 などがその例です。それぞれのバージョンには「いつまでサポートされるか」という期間が決まっていて、古いバージョンはやがてサポートが終了し使えなくなります。
通常、新しいバージョンにすることで、WEBサイトの表示速度向上やセキュリティ強化といったメリットがあります。例えば、バージョン8.0は、7.4と比べて約1.5倍の処理スピードがあり、ユーザーに対してスムーズな表示が可能です。逆に古いバージョンを使い続けると、セキュリティ上の問題が放置されてしまい、WEBサイトが攻撃にさらされる可能性が高まります。そのため、PHPは常にサポートされている最新のバージョンに更新することが大切です。
WordPressとの関係性
WordPressはPHPを使って作られているシステムです。ブログの投稿を表示したり、ページのデザインを切り替えたり、ユーザー情報を管理したりするなど、ほとんどの機能はこの言語で動いています。いわば、PHPはWordPressを動かす「エンジン」のような存在です。
また、WordPressには、テーマやプラグインといったものがありますが、この機能の中にもPHPコードがたくさん使われています。HTMLやCSSといった他の言語も使われているのではないかと疑問に思うかもしれませんが、これら他の言語は補助的に使われている、というのが正確な理解です。
PHPの編集で実現できること
もっと自分らしく、WordPressサイトをカスタマイズしたいと思ったことはありませんか。実は、PHPを編集することで、既存のテーマやプラグインではできない細かな調整や、独自機能の実装が可能になります。
そこで、PHPを編集することによって実現できる代表的な3つのことを、初心者にもわかりやすく解説します。サイトの自由度や性能を高めたいなら必見です。
デザインの自由度を高める
WordPressでPHPを編集できるようになると、サイトの機能やデザインを思いどおりに調整することが可能です。もともとWordPressはPHPで構築されているため、このコードを編集するということは、WordPressの根幹部分、いわば「エンジン」を自分で操作するというイメージになります。そのため、テーマの変更やプラグインの導入などと比較して、より深いカスタマイズや細かい設定ができるようになります。
例えば、テーマ内にある「functions.php」というファイルを編集すれば、WEBサイトの見た目を変えたり、使い勝手を改善することができます。フォントや色、レイアウトの変更はもちろんのこと、独自のスタイルシートやJavaScriptファイルを読み込ませて、機能的な強化を図ることも可能です。
その他、自分専用のウィジェットやサイドバーを追加したり、ポートフォリオやイベントといった独自の投稿タイプを作成したりすることもできます。こうしたカスタマイズは、通常の設定画面や既存のプラグインでは対応できないので、より高度なニーズに応えることができます。
ただし、コードを誤って編集すると、WEBサイトが正しく表示されなくなるなどの不具合が発生することがあります。そのため、安全にカスタマイズをおこなうには、変更前に必ずバックアップを取り、できれば本番とは別のテスト環境で動作確認をおこなうことが望ましいです。
WordPressの軽量化
2つ目に実現できることとして、WordPressの軽量化が挙げられます。WordPressにあるPHPコードを直接編集すれば、WEBサイトの機能や見た目を自分の目的に合わせて細かく最適化できます。
その結果、不要な機能や処理を省くことができ、ページの読み込みを速くしたり、サーバーへの負荷を減らすなどのことが可能です。例えば、多くの機能を詰め込んだプラグインを使わずに、必要な機能だけに絞ったものを使えば、WEBサイトをスリムな構成にすることができます。
また、デザインやJavaScriptといったファイルも、PHPで必要なものだけを効率的に読み込むように調整できます。結果として、表示速度の向上につながるだけでなく、無駄なファイルの読み込みを防ぐこともできます。
あるいは、WordPressが自動で作る複数の画像サイズの中で、使っていないものを無効にしたり、自分のサイトに合った画像サイズを新しく定義したりするなどのことも可能です。このように、PHPを理解していれば、WEBサイト全体のパフォーマンスを引き上げ、快適な動作環境を保つことができます。
WordPressに独自機能を実装
3つ目に実現できることとして、自分だけの機能をWEBサイトに追加できる点が挙げられます。例えば「ポートフォリオ」や「イベント情報」などの独自の投稿タイプを作ったり、ページ内に頻繁に使用するコンテンツを挿入できるショートコードを自作するなどのことが可能になります。
また、自分だけのウィジェットやサイドバーを追加して、特定の情報を表示するスペースを増やすこともできます。このように、PHPを使えば既存のプラグインでは実現できないような、オリジナルの機能をWEBサイトに自由に組み込むことができ、まさに世界にひとつだけのWordPressサイトを作ることができます。
PHPの編集を依頼する方法
自社でPHPの編集ができれば理想的かもしれませんが、編集できる人材がいないということもあるのではないでしょうか。このような場合、選択肢としては主にフリーランスと制作会社のどちらかに依頼する方法が考えられます。フリーランスのプログラマーであれば、WordPressやPHPに詳しい人も多いため、スピーディな対応が期待できます。具体的には、クラウドワークスやランサーズなどのサービスを通じて依頼することができます。
一方、WEB制作会社に依頼する場合は、より本格的な開発や大規模なサイト運用に対応してもらえるのがメリットです。複数人のチーム体制で進めてくれるため、トラブル時の対応においても安心感があります。ただ、その分費用は高めになる傾向があるので注意してください。それぞれの特長を踏まえて、自社の目的に合った依頼先を選ぶことが大切です。
関連記事:ホームページの作り方を解説!ツールごとの比較などお伝えします
WordPressで起こるPHPのトラブル
WordPressのカスタマイズでPHPを編集することは、機能拡張やデザイン調整に役立つ一方で、思わぬトラブルを招くこともあります。表示エラーやセキュリティの低下など、重大な不具合につながるケースも少なくありません。そこで、起こりやすいトラブルとその予防策について詳しく解説します。
関連記事:404エラーとは?WordPressで発生する原因や問題箇所の特定法など解説
WEBサイトの機能停止
WordPressでPHPを編集する際に気をつけたいトラブルの1つが、WEBサイトが動かなくなるという問題です。というのも、WordPressはPHPで動いているため、そのコードにミスがあると、WEBサイト全体に重大な影響がでる可能性があるためです。
例えば、テーマの「functions.php」というファイルに、カンマの付け忘れや、合っていないカッコなどがあるだけで、WordPressが真っ白になって何も表示されなくなるというのは、よくある事例の1つです。このことは、プログラマーの間でホワイトスクリーン・オブ・デス(死の白画面)と呼ばれ、管理画面にすら入れなくなってしまいます。このような事態を避けるには、ステージング環境と呼ばれるテスト用のサイトで、あらかじめ動作確認をしてから本サイトに実装するなどの対策をとってください。
パフォーマンス低下
WEBサイトの表示が遅くなるというのも、PHPに起こる問題の1つです。例えば、更新を怠って古いバージョンを使っていると、処理スピードが遅くなり、WEBページがなかなか開かなくなります。PHPは、ページの表示や投稿の読み込みなど、WordPressのあらゆる動きに関わっている重要な仕組みです。そのため、「正しいコードの書き方」「バージョンの新しさ」などに気をつける必要があります。
セキュリティ低下
セキュリティの低下もトラブルの1つとしてよく起こります。特に問題なのは、すでにサポートが終わった古いPHPのバージョンを使い続けている場合です。サポートが終わると、開発元からセキュリティの更新が一切おこなわれなくなり、すでに知られている弱点がそのまま残ってしまいます。
また、コードを追加・編集する場所としてよく使われる「functions.php」というファイルも、注意が必要です。このファイルにはWEBサイトの動きにかかわる大切なコードが書かれており、ハッカーに狙われやすい部分だからです。
信頼できない情報源からコピーしたコードを何気なく追加してしまうと、セキュリティが脆弱になり、リスクを高めることにもなります。セキュリティが甘い状態が続いてしまうと、WEBサイトの情報が漏れたり、改ざんされたりするので注意してください。
互換性の問題
通常、WordPress本体やテーマ、プラグインなどは、新しいPHPのバージョンを前提に開発されています。もし古いバージョンのPHPを使っていると、互換性の問題が生じ、プラグインやテーマが正常に動作しなかったり、思わぬバグが出てしまいます。
一方で、逆のケースもあります。つまり、プラグインやテーマが最新のPHPバージョンに対応しておらず、最新版にすることで不具合が発生するということです。特に、一部のプラグインは途中で開発が止まってしまうことがあり、その場合、最新版のPHPにバージョンアップした途端、動作しなくなることがあります。このようにバージョンとプラグインやテーマの互換性については注意が必要です。
まとめ
WordPressの機能を支える中心的な存在がPHPです。この言語を正しく理解することで、WEBサイトに多様な機能やデザインを追加することができます。デザインの自由度を高める、表示速度を向上させる、独自機能を実装するなど、WEBサイトに施せる利便性は大きな魅力ですが、一方でコードの記述ミスや互換性がないなどのことが原因で、正しくページが表示されないこともあるので注意してください。今回お伝えした内容を参考にし、早速WordPressの機能を大幅に拡張してください。